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2019年2月22日 金曜日

日本におけるアクティブラーニングの課題とアメリカから学ぶケーススタディ

アクティブラーニング,課題,アメリカのケーススタディ, カリフォルニア大学デービス校国際教育センター
 
2020年の教育改革に向け、英語教育においても生徒が主体的に学ぶアクティブラーニングの必要性がますます高まっています。しかしながら教育現場には依然として、アクティブラーニングが知識の定着に結びついているのか、その評価の方法、そして生徒主体に活動させることだけが本当にアクティブラーニングと言えるのかなど、課題が山積しています。
 
アクティブラーニングの実践において今、日本の教育現場が直面している課題や問題点を、アクティブラーニング導入の歴史が長いアメリカではどのように解決してきたのでしょうか。そこで、教育現場で留学コースをはじめグローバル教育全般に携わってきたアイエスエイ取締役 教育サービス統括本部長 平田敏之が、カリフォルニア大学デービス校 国際教育センター 東京校講師を務めるPatricia M. Willers(パトリシア・ウィラーズ)先生にお話を伺いました。生徒達を輝かせるための真のアクティブラーニングについて、ケーススタディを元にご紹介します。
 
■ Profile
Patricia M. Willers(パトリシア・ウィラーズ)
ミネソタ大学を卒業後、ライデン大学(オランダ)で言語学修士号取得。2011年より8年間に渡り、カリフォルニア大学デービス校 国際教育センターで教鞭を取る実力派講師。
 
株式会社アイエスエイ取締役 教育サービス統括本部長 平田敏之
約30年間、私立高等学校、中高一貫校で教鞭をとる。東北高等学校、岡山学芸館高等学校ではSELHiを担当。その後、立命館宇治中学校高等学校では国際主幹としてSGHを担当する。教鞭をとった全3校で「留学コース」の指導にあたり、これまで数々の生徒を世界に送り出して来た経験を持つ。2017年4月、学校の枠を超え、日本全体にグローバル教育を展開することを目的にアイエスエイへ参画。
 
>>> English Version
 
 

生徒達のより良い将来のために。積極的な授業参加を促し、
実生活においても英語を使えるようになってほしい

 
平田:お時間をとっていただき、ありがとうございます。本日は教育について少しお話をさせてください。パトリシア先生はこれまでアメリカ、そしてもちろん日本でも教えてこられた経験がたくさんありますよね。アメリカと日本で、どのくらい教鞭をとられてきたのですか?
 
パトリシア先生(以下敬称略):そうですね。10年余りになります。ほとんどはカリフォルニアのデービスで、様々な国籍の生徒達でした。たいてい10から20ヵ国の様々な国々から来た生徒達で、とても興味深い環境でした。少しの間ですがメキシコ、それからオランダでも生徒達に教えたことがあります。そして日本です。来日して約4ヵ月半ですが、デービスのほとんどの授業にも日本人の生徒達がいました。
 
平田:アメリカの生徒達、海外からの留学生達、そして日本の生徒達と、多くの国籍の生徒達に教えてきたのですね。
 
パトリシア:そうです。あらゆる年齢の、異なる集団、異なる目的を持つ生徒達に教えてきました。
 
平田:それはすごいですね。違いに興味があります。海外からの生徒と日本の生徒の違い、特に授業での違いについて教えてください。
 
パトリシア:そうですね。違いの多くは文化的な価値観に起因します。基礎レベルにおいて、その文化が価値をおくのは話すことやコミュニケーションをとることでしょうか? ライティング? あるいはリーダーシップをとったり、人の話を聞いたりルールに従うことでしょうか? この価値観は、授業にも直接関係します。たまに話す気満々で教室にやって来る留学生がいます。彼らは話すことはできますが、書くことはあまり得意ではありません。なので、彼らにとって綴りや正しい文法、エッセイを書いたりすることは難しいといった具合です。
 
日本の生徒達については、多くのステレオタイプもいささか本当です。彼らの文法は素晴らしいですが、それが必ずしもうまく適応できる、応用できるということではありません。だからこそ、私が日本で英語を教える意味があると思っています。やる気があって、英語の基礎力をもっている日本人の生徒達を授業に積極的に参加させ、英語力を伸ばす手助けをします。書いたり、論理的な議論をしたり、より意義のある議論をすることで、実生活においても英語を使えるようになります。これらは私が生徒達に求めている目標であり、次のステップであり、それによって英語を使って彼らの人生や環境をより良いものにするためです。
 
 

 

マインドセットとアプローチの方法を変えることで、
生徒達がゴールを自ら考え、授業を創り上げるようにする

 
平田:とても興味深いです。昨今、日本の次なるステップは、数年で日本の教育システムを変えることだと言われています。教師主導の学習から生徒主体の学習への移行に重点的に取り組んでいる最中す。「アクティブラーニング」とも言いますね。生徒主体の学習を授業で行う秘訣は何なのでしょう?
 
パトリシア:そうですね。秘訣は一つではないので説明するのが難しいのですが、考え方(マインドセット)でしょう。教材やコンテンツ、生徒達に対するアプローチの仕方です。従来の日本の教育システムとは多く異なると思います。私の授業では初日から、生徒達により多くの権利やリーダーシップ能力を与えるようにしています。彼らに授業を引っ張ってほしいのです。だから日本のシステムとは異なります。なぜなら私は様々な意味で授業の進行を生徒達に委ねているわけですから。
 
私は課題の内容や概念、枠組み等は提供しますが、そこから先は生徒達がその内容を使い、生徒自ら積極的に活用し、議論し、共有し、操作し、他の情報と関連付け、解決したり、分析したり、論評してほしいのです。ここでは私は大きく関わりません。これを移行するのはなかなか難しいことだと思います。おそらく、内容を提供することに慣れている日本の教育システム全体が直面している大きな課題のひとつでしょう。
 
生徒達にピースを与え、彼らが授業を創り上げるにはどうすればいいのでしょうか?
 
私は課題のゴールはわかっています。ですが、生徒たち自身でそのゴールを見つけてほしいのです。生徒達に教える際に、アウトライン(梗概)を持つことに慣れている教師にとってはとても抽象的かもしれません。おわかりいただけましたか?
 
平田:わかります。パトリシア先生が言及されたことは、教師主導の学習から生徒主体の学習体系への教え方に変えたい教師たちにとってとても興味深い観点だと思います。日本の授業については、どう感じていますか? 雰囲気や生徒の積極性や学習態度にしても、アメリカで経験してきたのとは少し違うのではないですか?
 
パトリシア:はい。とても違います。私自身がとても積極的な人間なので、私の将来のために知ったり、覚えておく必要がある素晴らしいアイデアやとても重要な情報だとしても、座って、ただ誰かの話を聞いているのは大変です。それらを活用したいですが、個人的には座って聞いていたくはないです。
 
日本の高校生についてどう思うかとみなさんよく私に聞いてきます。皆さん私の答えにびっくりしています。日本人の生徒は意見を述べないとか、論理的思考力に乏しいともよく耳にします。これらは私にとってはとても興味深い意見です。なぜなら、私にはこうした経験がないからです。というのも、先ほどもお話ししたように、生徒達に授業を引っ張ってもらうようにしているからです。私の授業では生徒達は自ら意見を述べていますし、論理的に考えていると感じています。決して私がそうするように強いることはないのです。
 
教師主導である現状の日本の教育システムでは、生徒達は自らの意見を共有する機会がないのだと思います。ただ機会が与えられていないだけなのです。論理的思考力についても同じです。問題の解決方法をそのまま伝えることもできますが、もし生徒達に問題を解決する機会を与えれば、問題や問題解決について、そして自ら論理的に思考する学びの場を多く得ることになると思います。違いが明らかになっていますか?
 

 

リスクを冒してでも、教師も生徒も勇敢であってほしい。
アクティブラーニングには、それだけの価値がある

 
平田:なるほど。では最後に、教師達と生徒達に向けて、生徒主体の授業を行うためのアドバイスを教えてください。もちろん、教師達の役割は授業を与えることで、生徒達の役割は授業に参加することだと教師達はわかっています。そのうえで、アドバイスをいただけますか?
 
パトリシア:数点アドバイスはありますが、「勇敢であれ」でしょうか。教師も生徒もです。教師は、リスクを冒してでも、授業を本当にがらりと変えてみるくらい勇敢である必要があります。なぜなら、その価値があると思うからです。日本政府を含めた多くの人々が価値があると考えていると思います。もちろん生徒もです。生徒も勇気を持って自分の意見を共有することが必要です。そしてもしその経験がないなら、それは新しいことですから、忍耐が必要です。
 
忍耐力が2つ目のアドバイスです。がらりと変わりつつある授業、異なる集団や立って話している人々がいる授業に慣れるには時間がかかります。少し無秩序状態のようでもありますが、辛抱強くできたら、その状態にも慣れ、よりよい学習環境となります。
 
それから気付きも大切です。私は至る所でアクティビティのためのアイデアを探すのが好きです。ニュースから、友達から、通りで見かけた人々から、電車の中で観た小競り合いから。教師はより意識して、生徒がより気付きを得られるように手助けすることができます。そうすることで環境、そして態度も変えることができます。
 
平田:わかりました。教師と生徒の双方にとって、教育においてリスクを負っても冒険者であれということですね。
 
パトリシア:はい。その通りです。
 
平田:ありがとうございました。
 


 

English Version


 

Tasks for Active Learning in Japan and Learning from the Case Studies in USA

 
Hirata: Thank you very much for sharing time with me today. I want to talk a little bit about education today.
You have a lot of experiences teaching both in America and in Japan.
How long have you been teaching in America and in Japan?
 
Patricia: Well, I’ve been teaching for about a decade, about 10 years. A lot in Davis, California, and there I had many different student populations. I would typically have students from 10 to 20 different countries, so that was an interesting environment. I also taught in Mexico for a while, and in the Netherlands I worked with students also. In Japan, I’ve been here for about 4 and a half months, but I had Japanese students in my classroom for most of my time in Davis.
 
Hirata: So you taught a lot of nationalities, such as American students, international students and Japanese students.
 
Patricia: Yes, all ages, different populations, different purposes.
 
Hirata: That’s great. I’m interested in the differences. Could you tell me the differences between international students and Japanese students? Especially, in classes.
 
Patricia: Well, a lot of it goes back to cultural values. At a basic level, does the culture value talking and communication? Or writing? Or do they value leadership, or do they value listening or following rules? That relates directly to the classroom. Sometimes students from countries come in and they are ready to speak. They can speak, but they aren’t very good at writing, so it’s hard for them to spell or use correct grammar, or write an essay.
 
For Japanese students, a lot of the stereotypes are somewhat true, their grammar is excellent—great grammatical rules—but that doesn’t necessary mean they can apply it or use it, and that’s how I have played a role here in Japan. Taking a classroom of Japanese students who are motivated, who have a good base of English, but helping them to expand that to use it in an active way in the classroom, write and have stronger arguments, have more meaningful arguments, and be able to use it in their real life. That’s the next step I try to take, that’s usually my goals for my students, so they can improve their life and their world using English.
 
Hirata: I see, pretty interesting. Recently, it’s been said that the next step for Japan is to change the educational system of Japan in the next couple of years. They want to focus on shifting from teacher centered learning to student centered learning. We often use the word active learning, but I would like to ask you, what is the key of teaching classes through student centered learning?
 
Patricia: Well, it’s hard to say there is just one key. It’s a mindset. It’s a way of approaching materials and content and students. I think it’s a lot different than a traditional Japanese system. In my classroom, from the first day, I’m working to give the students more power, more leadership abilities. I want them to lead the class. This is different because I’m relinquishing control, in many ways.
 
I provide content, ideas or a framework, but from there, they take that content and I want students to actively use it, discuss it, share it, manipulate it, combine it with other information, sort it, analyze it, or critique it, and I don’t have a big role in that. I think that is something difficult to transition to, and that’s probably one of the biggest challenges that the whole Japanese education system is facing—when you are used to providing the contents.
 
How do you change that so you give them the pieces and students create the lesson?
 
I know the goal, but I want them to find the goal on their own, and I think that’s so abstract for someone who is used to having the outline when teaching them. Does that make sense?
 
Hirata: That makes sense. What you mentioned should be interesting for the teachers who want to change the way of teaching from teacher centered to student centered system.
 
How do you feel about Japanese classes? Maybe the atmosphere or student participation, since the way of learning in classes is a little different from the way you have experienced in America.
 
Patricia: Yes, it’s very different. I’m a pretty active person myself, so it’s hard to sit and just listen to someone even if they have great ideas and really important information that I need to know and memorize for my future. I want to use that, but I don’t personally want to sit and listen to it.
 
People often ask me what I think of Japanese high school students, and they are always surprised by my response. People say that Japanese high school students don’t share their opinion or that they are poor with logic. These are really interesting opinions for me to hear, because I have not had that experience. Perhaps this comes back to my earlier statement about letting students lead in the classroom. When I’m in the classroom, I want them to do it (to make the connections), so I don’t do it, I let them do it.
 
I think the system in Japan currently—where its teacher centered—students don’t have the opportunity to share their opinion. They’ve just never been given the chance, and the same thing with logic. You can tell someone how to solve the problem, but they will learn more about the process, the problem and about themselves if you tell them to solve the problem. Does that demonstrate the difference?
 
Hirata: Yeah. So for the end, could you give the teachers and the students’any advice on how to do student centered classes? Of course, teachers know that their role is to give classes, and the students’ role is to participate in classes. If you could, would you give them advice?
 
Patricia: I guess a couple pieces of advice would be “to be brave.” That goes for the students and the teachers. Teachers have to be brave enough to really change up their classroom, take that risk. Because I think it will be worth it, and I think a lot of people will think it’s worth it, including the Japanese government, the students too. Students need to be brave enough to share their opinion. And if they haven’t had that experience, then that will be new and you’ll need patience.
 
That would be the second piece of advice. It takes time to get used to a classroom that’s changing, with different groups and people standing and walking and talking. It feels a little chaotic, but if you are patient, you can become accustomed to that and it becomes a better environment for learning.
 
Last is awareness. I like to look for ideas for activities everywhere. In the news, from my friends, from people I see on the street, or from a conflict I saw on the train. Teachers can be more aware and help their students to be more aware. That can change the environment and attitude.
 
Hirata: I see. So for both the teachers and the students, they should be risk takers in education.
 
Patricia: Yes, exactly.
 
Hirata: Thank you very much.